《香織》お腹空いてます?

携帯は、圏外だった。

30分ほどたった。

川端さんは、ドアの前に立ったまま視線を下に落としている。

私は壁際で座って待つことにした。


「座ったらどうですか?」
「災難ですね」
「急ぎのアポとかありました?」

など…
話し掛けようか迷いながら時間は過ぎていく。

仲良い人とでも気まずいのに、
話したことない人となんて。
しかもイケメン。
いっそおじさんとかのほうが、気まずさはなかったかも…

色々考えていると、不意に

ぐうぅーきゅるきゅるきゅるきゅる…

川端さんのお腹が鳴った。


…お腹空いてるのかな?

昼休み明けなのに?



聞こえなかったふりをするには、音が大きすぎた。

イケメンもお腹鳴るんだ。
私は笑いをこらえる。が。

ぐおぉぉぉ

さりげなくお腹を押さえていた川端さんの努力もむなしく、再度轟音が鳴り響いた。