《香織 終》無事に
目を覚ますと、17時だった。
川端さんは起きており、
「さっき連絡ついたよ、あと30分くらいで出られるってさ」
と話す。
「出られたらもう今日は帰るかな。疲れちまった」
寝起きで意識がぼんやりする中、
くぅー
小さく、でもはっきりと香織の腹が鳴った。
一気に目が覚め、顔が赤くなるのがわかった。
「え」
川端は香織のほうをみてしばらく考え、
「もしかしてさ、さっきもらった弁当って昼飯だった?」
「え、いや、でも大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃないっしょ!悪い、自分が腹減りすぎててなんも考えてなかった!」
グゥゥー
と、また腹の音が響く。が、音が一つではなかった。
川端が腹を撫でながら、
「実は俺も…その、足りなくて…」
今日は災難だよな、本当に…と苦笑いする。
「出たら飯食いにいこう!飯奪っちゃった分奢るから!」
手を合わせながら謝る川端は、さっき会ったばかりのときより幼く、可愛げがあり香織は思わず笑ってしまった。
その後10分ほどで、無事に出られた2人には、
香織には「いいなぁ、川端さんとなんて」
川端には、「お前、あの移動してきた美人さんと一緒だったって?ラッキーだったな」
と声が掛けられた。
いやいや、心配してくれよ(くださいよ)。
と、口を揃えて文句を言ったのち、それぞれの上司に報告し、2人は焼肉屋に向かった。