《香織》エレベーターで。

戻りたくないなぁ。

最近仕事が憂鬱だ。

昼休み明け、香織はためいきをつく。

新しいことに慣れるのに時間がかかる私にとって、オフィスごと変わってしまう移動は地獄だった。

新しいグループに馴染めず、朝から夜まで一人もくもくと仕事をしている。

別にいじめられているとかではないけど、

「…疎外感、ってやつ」

そう呟くと、エレベーターが来た。



香織が乗り込んだあとに、
慌てたように駆け込んでくる男性がいた。

確か先輩の、川端さんだ。
30近くで、割りとイケメン。おばさまがたがよく騒いでいるから、名前も覚えた。

「おはようございます」
「あぁ、おはよ」

香織がドアの「閉」を押す。
すると、同時に


ぐうぅ…


ん?
お腹の音?
みたいな音が小さく響いた。

からかうほどの仲でもないし、確信もないので、そのまま。



すると、
「ガタン!」

「え?」

エレベーターが、急停止した。