《香織 終》無事に

目を覚ますと、17時だった。川端さんは起きており、 「さっき連絡ついたよ、あと30分くらいで出られるってさ」と話す。「出られたらもう今日は帰るかな。疲れちまった」寝起きで意識がぼんやりする中、くぅー小さく、でもはっきりと香織の腹が鳴った。一気に…

《香織》いつになったら

さらに1時間。遅い。3時間はもう過ぎた。いつになったら出られるの? 連日の激務の疲れが出たのか、腹が満たされた川端は眠ってしまっていた。通信ボタンを何度か押してみたが、反応はない。くうぅ~…今度は香織の腹が鳴った。思わず腹を押さえるが、川端は…

《香織》お弁当

「え?弁当?」川端さんは驚いて、 「いや、悪いだろ?」 と断る。 やはり恥ずかしいようだ。「そろそろ出られると思うし…」ぐぅ…「もう腹へったの通りすぎたから…」ぐっ「お腹、聞こえてますよ?」「え?いや、…」「我慢してますーって音」「…うるせーな」…

《香織》諦め

1時間後。「そっか!内村と同期か。あいつも頑張ってるよ」 お互いの部署の同期の話などをする中で、かなり打ち解けて気まずさは減っていた。 香織が、 「今も割りと仲良くて、この間はみんなで焼肉いったんですけど、」 と話すと「焼肉かぁ…」と川端はゴク…

《香織》正直なお腹

これは聞いてあげたほうがいいだろう。 「お腹、空いてるんですか?」川端さんは、 「いや、別に…」と答える。しかし、この狭い空間だ。 さっきから、川端さんのお腹が小さく、くぅくぅと音をたてているのが聞こえる。「座ったらどうですか?長くかかるみた…

《香織》お腹空いてます?

携帯は、圏外だった。30分ほどたった。川端さんは、ドアの前に立ったまま視線を下に落としている。私は壁際で座って待つことにした。 「座ったらどうですか?」 「災難ですね」 「急ぎのアポとかありました?」など… 話し掛けようか迷いながら時間は過ぎてい…

《香織》出られない

びっくりした…。 川端さんと顔を見合わせる。 「驚いたな。」と言いながら、川端さんは24時間監視中、と書いてある辺りのボタンを押す。 オペレーターと繋がった。 「永田町の○○ビルの…」 川端さんがオペレーターと話している。 「ご安心下さい。安全は確保…

《香織》エレベーターで。

戻りたくないなぁ。最近仕事が憂鬱だ。昼休み明け、香織はためいきをつく。新しいことに慣れるのに時間がかかる私にとって、オフィスごと変わってしまう移動は地獄だった。新しいグループに馴染めず、朝から夜まで一人もくもくと仕事をしている。別にいじめ…